
コンピエーニュの森を舞台に、見えない夜の生き物たちの気配を「知覚できるもの」に変える、AR夜間観察メガネのコンセプトプロトタイプ。
UXリサーチ
フィールド調査
ストーリーボーディング
アイデーションワークショップ
ARコンセプト
プロトタイピング
課題・授業
UTC ICX1(エコデザイン入門)課題
チーム
Blanche Nguyen · Edgar Djeuga · Gakuto Sasabe · Shiqi Yu
担当領域
フィールド調査、文献リサーチ、インタビュー、ユーザーテスト、最終プロトタイプのコンセプト
研究
アンケート31名・半構造化インタビュー2件・学生対象のストーリーボード概念検証
ICX1(エコデザイン入門)の課題として、「コンピエーニュにおける、あらゆる生き物にとっての夜の体験」というテーマに取り組んだ。チームでコンピエーニュの森を実際に夜間探索したところ、動物の気配(足跡・物音)は確かに存在するのに、暗さゆえにほとんど知覚できない一方、ジョガーや散歩者など人間の気配は目に見える、というギャップに気づいた。
「L'extinction de l'expérience(経験の消失)」という文献や、スタジオジブリ作品(人間と自然の対立、際限のない都市化、生き物の回復力というテーマ)を参照しながら、都市生活者と自然の関係を再考した。31人へのアンケート調査では、74.2%が「自然との関係が(大きく)変化した」と回答し、その要因として都市化(77.4%)・スクリーン時間(71%)が突出していた。
2件の追加インタビューでも、「子供の頃は木に登って果物を食べていたのに、今はスーパーで買う」「自然は「景色」としか見ていない」といった、自然との断絶を示す語りが得られた。
仮説:暗さ・恐怖・デジタル習慣によって知覚しづらくなっている夜の自然を、感情と直接的な体験を通じて「生きたもの」として再認識できるのではないか。
コンピエーニュ工科大学ICX1課題として、Blanche Nguyen・Edgar Djeuga・Gakuto Sasabe・Shiqi Yuの4人チームで実施した。
コンピエーニュの森への夜間探索を主導し、動物の気配(足跡・物音)と人間の気配の非対称性という、プロジェクトの出発点となる気づきを得た。
「経験の消失」論やスタジオジブリ作品などの参照軸を収集し、2件のインタビューを通じて子供時代と今の自然観のギャップを掘り下げた。
ストーリーボードを用いた概念検証テストを設計・実施した。「コンセプトをもっと物理的に分かりやすくすべき」という重要な気づきが、最終プロトタイプの形を決めた。
「バブル」型の初期アイデアから、OLED透過ディスプレイ・指向性マイク・暗視カメラ・Bluetooth/Wi-Fi・Arduino制御を備えた携帯型ARメガネへと、コンセプトを具体化した。
現場での気づきからユーザーテスト、プロトタイプのコンセプトまで一貫して関わったことで、調査とデザインの意思決定が最後までつながっていた。
調査からコンセプトまで、6ステップ
「コンピエーニュにおける夜の生物体験」というテーマを出発点に、課題発見とコンセプト提案という目的を設定した。
ペルソナ/オブジェクト選定→夜の森の疑似没入体験→体験の共有→シナリオ創作→ストーリーボード化、という5段階を経て、恐怖・不快感・視認性の低さという障壁と、「感覚の増幅」という解決の方向性を導いた。
デジタル漬けの学生が森の入口の光る泡に入り、生き物たちの投影を体験し、出口でARメガネを渡される、という導入ストーリーボードを制作した。18〜30歳の学生を対象にテストし、好意的な反応とともに「装置をもっと物理的に分かりやすくすべき」という改善点を得た。
概念検証テスト(18〜30歳、コンピエーニュの学生)
参加者は好奇心と受容性を示し、「ストーリーボードが理解と想像を助ける」「没入的・詩的で興味をそそられる」と好評だった。
AR技術への評価
「夜の自然をよりよく知覚する手段として妥当」という肯定的な反応を得た一方、「コンセプトをもっと物理的に明確化する必要がある」という課題も浮かび上がった。
この結果を踏まえ、プロトタイプを「バブル」から携帯可能なARメガネへと具体化させ、コンセプトの受容性の検証と次の設計課題の特定につなげた。
テスト対象が学生のみに限定されており、子ども・地域住民・森林管理者など他の層での検証はできていない。
テスト環境(夜・森・低視認性)自体に制約が大きく、実施できる調査量が限られた。
森でのフィールド調査の回数も限定的で、季節や時間帯による違いは十分に検証できていない。
今後の改善点として、季節・時間帯を変えた複数回の実地没入、生態学者・エンジニアとの協働、そして感覚を自然に近づけるためのデバイスのさらなる簡素化が挙がった。