M5 Scouter: a clip-on AR unit mounted on a pair of glasses (3D render)

Engineering

2024

M5 Scouter

メガネに後付けできる、誰でも手が届く価格を目指した自作ARデバイス。ランニング中の速度・方向表示や、視界の中でのポモドーロタイマー表示ができる。

M5Stack ATOMS3

GPS

Fusion 360

3Dスキャン

Arduino / PlatformIO

個人開発

プラットフォーム

M5Stack ATOMS3 + GPSユニット

電源

500mAh LiPoバッテリー、USB-C充電で約3時間駆動

担当領域

企画からハードウェア設計、ファームウェア実装まで、すべて一人で担当

公開・発表

2024年7月31日に完成・公開、M5Stack Japan Creativity Contest 2024に出展

背景と技術的課題

市販のARグラスは高価で入手しづらい中、「もっと安く、誰でも開発できるARデバイスを作れないだろうか?」という発想から個人開発をスタート。

きっかけの一つは、ランニング中にスマートウォッチの画面を確認するために腕を持ち上げる動作が煩わしいと感じたこと。ここから「視界の隅に情報を表示できれば」というアイデアが生まれ、ドラゴンボールの「スカウター」のような、日常的に使えるARデバイスというコンセプトに発展した。

技術的な核心は、ATOMS3のような安価なマイコンモジュールと、メガネへの後付け可能な小型・軽量な機構設計を両立させることにあった。

課題:安価なマイコンモジュールと、メガネに後付けできる小型・軽量な機構を、同時に成立させる。

Wearing the M5 Scouter: display folded up beside the eye, and flipped down in front of it

役割と担当範囲

個人開発プロジェクト(ProtoPediaのメンバー登録も本人のみ)。企画からハードウェア設計、ファームウェア実装まで、すべて一人で担当。

本体設計

ATOMS3・LiPoバッテリー(500mAh)・TP4056充電基板・GPSユニットを組み合わせた回路構成を検討。

筐体・機構設計

メガネに装着・折りたたみ可能な機構をFusion360で設計。

ファームウェア開発

GPSモジュールとの通信、頭の向き+側面プッシュスイッチによる操作系を実装。

アプリケーション開発

Running Vision(速度・目的地方向表示)、Pomo Watch(ポモドーロタイマー表示)を実装。

技術選定とアーキテクチャ

コア基板

M5Stack ATOMS3。他のATOM(例:ATOM Echo)に差し替えれば、マイク・スピーカーなども拡張できる。

電源

500mAh LiPoバッテリー+TP4056充電モジュール。USB-C充電で約3時間駆動。

位置情報

GPSユニット(AT6558)をUART通信で接続。

操作系

装着中の頭の向き(方向操作)+本体側面のプッシュスイッチ。

機構

どんなメガネにも後付けでき、視界を遮る時は折りたたんで退避できる。

開発ツール

Arduino/PlatformIO、CAD設計にFusion360、実物の眼鏡形状の再現にRealityScan(スマホによる3Dスキャン)を活用。

Inside the M5 Scouter unit: ATOM S3, 500mAh LiPo battery, TP4056 charger and GPS unitThe 3D-printed M5 Scouter unit with the ATOMS3 on top

実装で工夫した点・詰まった点

GPSユニットとの通信で丸一日ハマる:ATOM EchoにGPSユニットを接続した際、公式サンプルコードのままではリセットを繰り返す不具合が発生。原因はモジュール標準のシリアルピン指定が合っていなかったことで、Grove端子経由のRXD/TXDピン番号を実際の配線と逆に指定することで解決した。

「かっこよく見えない」問題を妻のアイデアで解決:GPSユニットを基板前面に置く設計だと間延びした見た目になってしまい、一人で悩んでいたところ、専門知識のない妻から「GPSユニットを基板の裏に配置すれば全体が短くなるのでは」という提案を受け、実際に試すと見た目が大きく改善した。

自分の眼鏡の形状を正確に再現:RealityScanでスマホから自分の眼鏡を3Dスキャンし、Fusion360にインポート。実寸サイズのメガネ3Dモデルの上にARユニットを配置することで、実際に装着したときのバランスを検証しながら設計を進めた。

成果・パフォーマンス

M5Stack Japan Creativity Contest 2024

出展し、2024年7月31日に完成・公開。

外部からの反応

ProtoPediaで公開後、YouTubeで第三者クリエイターに紹介されるなど、外部からの反応を獲得。

実際に動く2つのアプリ

Running Vision・Pomo Watchという2つの実用アプリケーションを、既製品より安価な構成で実際に動作するレベルまで作り込んだ。

学び・今後の改善点

ハードウェア開発は、電気的な接続(ピン配置)、放熱、ソフトウェア環境設定など、レイヤーの異なる小さなつまずきの積み重ねであり、一つひとつ地道に解決していく粘り強さが求められることを再確認した。

Running Vision・Pomo Watchともに開発中の機能であり、姿勢が悪いまま走っている場合の警告機能など、今後拡張したい要素も見えている。